自然栽培に感じた明るい未来!佐伯康人さんのお話会参加レポート

G20開催期間の真っ最中、そこかしこに緊張感漂う大阪市内で自然栽培パーティーの栽培指導顧問・佐伯康人さんのお話会《自然栽培と地球の未来》が開催されました。

《自然栽培パーティー》の正式名称は、《一般社団法人 農福連携自然栽培パーティ全国協議会》。農業と福祉の連携......端的に言うと、障がいを持つ人に農業に従事してもらい、人材不足を解消し、更に美味しい作物を消費者に届けよう......という三方良しな取り組みをされている団体です

今回のお話会の主催者、元カリスマ占い師の守田矩子さんのブログでこの紹介動画を拝見してから、私ももっと知りたい!という想いに駆られていました。

 

佐伯さんとの出会いがきっかけで家庭菜園を始められた矩子さん。その様子の発信を日々拝見しつつ、お話会を主催されると知りすぐに申し込み、当日はスタッフとしても参加してきました^^

会場は大阪城が真正面に見える素敵な場所! 厳戒態勢で人がまったくいない大阪城なんて、なかなか見られるものではありません(笑)。

私が佐伯さんのお話会に参加したキッカケ

自然栽培、自然農法、自然農......いくつか似たような言葉がありますが、この記事では《自然栽培》に表記を統一して書き進めますね。

自然栽培と聞いて、真っ先に頭に浮かぶのは《奇跡のリンゴ》の木村秋則さん!という方も多いかもしれません。この作品は映画化もされていますしね(Amazon Primeビデオで観られます!)。

私もこういった本を読んだり、自然栽培も手がける滋賀の中道農園さんに取材に伺った経験もあったので、自然栽培に対する認識はおぼろげながらありました。

農薬を使わないのはもちろん、化学肥料や有機肥料なども使わない《無肥料で》《より自然に近い》農業。でもそこで、障がいを持つ人との共同はどのように始まったのだろう。そしてそこに、佐伯さんはどんな未来を見ているのだろう。農業にはまったく興味がなかった!と言い切る矩子さんを、突き動かしたものは何だったんだろう......。

 

そんな興味が尽きなかったので、このお話会をとても楽しみにしていた私。会場に現れた佐伯さんはTシャツ・短パン・ビーチサンダル(笑)。すぐに田畑に入れるよう、いつでもこのスタイルなのだそうです^^

原点は「子どもたちが自立できる社会を作りたい」

北九州の工業地帯に生まれ育ち、20代でプロミュージシャンになった佐伯さん。その後結婚し、授かったお子さんは三つ子。ところが出産時のトラブルが原因で3人とも脳性麻痺に......。一瞬目の前が真っ暗になったものの、次の瞬間「障がいがあっても自立できる社会を作ればいいんだ!」とひらめいたそうです。

とはいえ自宅でリハビリをしつつ3人を育てるのは並大抵のことではありません。そこで民生委員をされていた佐伯さんのお母様が社会福祉協議会に呼びかけたところ、集まった50名のボランティアさんが《三つ子ちゃんを守る会》を結成。毎日交代で家に来て、リハビリを手伝ってくれたそうです。

 

最初は「絶対に立てるようにしてやる!」とリハビリに力を入れていた佐伯さんですが、ボランティアの方に「今朝嫌なことがあったけど、この子の顔を見たら癒やされた」と言われたことから「この子たちはハンデがあっても、そこにいるだけで誰かを幸せにしているんだな......」と気づいて、愕然。

そこからリハビリの量を減らし、ボランティアの方と楽しく過ごす時間を増やしたところ、お子さん達が機能獲得・機能回復していくスピードが格段にアップ! リハビリもさることながら、情緒的な時間を過ごすことが大事だったんですね^^

 

そのお子さんたちが、地域の小学校に入ったあたりから「この子達の将来はどうなるんだろう......?」とリアルに考え始めた佐伯さん。障がい者が働く事業所などをたくさん見学したところ、直面したのは《平均月給3,000円》という厳しい現実......。

知的・身体的・精神的など障がいの種類は様々なのに、なぜ皆が横並びで同じ作業をするのだろう。菓子箱の組み立て作業など、僕がやるより遥かに早く丁寧に仕上げられるのに、それでももらえるお金はごくわずかなんだな......。

 

そんなことに衝撃を受けた佐伯さんは、《百姓=百の仕事をする人》つまりたくさんの作業がある農業であれば、ひとりひとりのハンデや性格に合った作業をマッチングさせられるんじゃないかという想いで農業を始められたのです。

佐伯さんと自然栽培の出会い

まったくの農業初心者だった佐伯さん。農薬を使おうとして気分が悪くなってしまったり、堆肥を入れたら、作物をあっという間に虫に食べつくされてしまったり......。様々な農法を手探りで試しているなかで《奇跡のリンゴ》と出会い、感動で嗚咽したそう。

佐伯さんと自然栽培を繋いだのも、木村秋則さんだったんですね^^

そこから木村さんに師事しつつ、自然栽培を始めた佐伯さん。近所の農家さんに笑われたりしつつも懸命に取り組んだ結果、夏を過ぎたあたりから稲の成長ぶりがものすごいことに......!

写真の左側が慣行農法、右側が自然栽培の稲。根っこの量も、葉や稲穂の量も、同じ作物とは思えないほど違う。肥料を与えない自然栽培では、植物が自身の力をフルに使って土の栄養を吸収しようとするため、ものすごくたくましく育つんですね......!

 

またウンカという虫が大量発生する時期、田んぼを訪れた佐伯さんが目にしたのは、たったひと晩で張り巡らされた一面のクモの巣でした。クモはウンカを食べてくれる益虫です。そのクモの巣に朝露がキラキラと輝いているのを見て「これは農業ではなく芸術だ......!」と感動されたそう。

 

土に栄養分が少なければ、根粒を作り窒素を固定してくれる豆を一緒に植える。土の栄養が増え過ぎたら、葉物や玉ねぎを植えてそれを減らす。裏作でニンニクを植えて稲の成長を促す。

昨年生えなかったこの雑草が、今生えているのはなぜだろう。この虫はなぜこの作物にばかりつくのだろう。そんな風に自然や現象をよく観察し、その背景に想いを馳せて工夫をすることは「毎日違う女の子が遊びに来てるみたいで、全然飽きないんです^^」と話す佐伯さん。お話会中、ずーっと楽しそうにされていたのも印象的でした。

他にもハッとするようなエピソードをたくさん伺いました。各地の自然栽培農地で、タガメ・ミズカマキリ・メダカ・サンショウウオ・トキといった、絶滅危惧種に指定されるような動物や虫が戻ってきていること。福島では自然栽培の農地からだけ放射性物質が検出されなかったこと......。

 

海外からのお客様が多い格式高いレストランや、東京オリンピックの選手村での食事に自然栽培パーティーの野菜が求められている現状。その立役者として、今まで活躍する場の少なかった障がい者にスポットライトが当たることは、痛快ですらあると言います。

 

より《効率的》な農業を目指した結果が今の慣行農法なのだろうけれど、自然の摂理に適っている自然栽培は本当の意味で《合理的》だと感じるし、微生物・虫・動植物はもちろん、ヒトであれば障がいの有無に関係なく、多様な生命が介在できる《超ダイバーシティーな場》でさえあるんだなぁとしみじみ思いました。

 

無農薬有機栽培と自然栽培、どう違う?

自然栽培では「肥毒」といって、肥料こそが虫を呼び寄せる原因だと考えられています。肥料が多いと作物は大きく育つけれど、作物中に硝酸態窒素という物質が多く含まれてしまい、それが人体に悪影響を及ぼす可能性がある(EUでは作物中の硝酸態窒素の基準値があります)。

虫がその作物を食べてしまうのは、過剰な硝酸態窒素を分解するため。でも慣行農法ではその寄ってきた虫を排除するために更に農薬を使う......。

余談ですが、窒素分を多く与えた野菜は《大きく・緑が濃く・エグみが多く》育つ傾向があります。最近スーパーでよく見かける「サラダ春菊」「サラダほうれん草」といった生食用の葉物は、与える窒素の量を減らして《小さく・緑が薄く・エグみが少なく》育てたものだと、以前野菜のプロに伺いました。それからは、加熱調理に使う場合でも、生食用の葉物や緑の薄いものを選ぶようにしています^^

 

ちなみに慣行農法・無農薬有機栽培・自然栽培のそれぞれの作物を同じ条件下で放置すると、真っ先にドロドロに腐敗するのは無農薬有機栽培の作物であることも。有機栽培で使われるのは有機肥料......主に糞尿から作られる動物性の堆肥ですが、十分に熟成させないまま大量に使われていることが、この腐敗の原因ではないかと考えられているそう。

一方自然栽培の作物は水分が徐々に抜け、腐敗するのではなく「枯れて」いく。モノによってはドライフルーツのようになったり、芽が出ることも。瓶に入れた場合は発酵して漬物やお酒のようなものが出来ることもあるのだとか。そういえば、野菜室の奥で自然栽培の人参が勝手に干し野菜になってたこと、あるなぁ......(笑)。

 

発酵関連の本を読んでいると「腐敗と発酵は本質的には同じもの、人間にとって有益か有害かの違いでしかない」とよく出てきます。確かに微生物視点に立つとそうかもしれませんが、穏やかに枯れていくのと、悪臭を放ち姿を失っていくのとでは、有益かどうかより《美しいか否か》という点が大きく違うような気がしてなりません。

↑これは我が家で育てた黒麹!
 

慣行農法で使われる肥料や農薬は決して安いものではありません。なのに作物は10円でも20円でも安いことが求められる。まさに薄利多売になってしまって、農家さんは疲弊していくし、微生物が減って土は痩せていく......。

それに引き換え、自然栽培は農薬代も肥料代もかからないし、収量も多い。今は需要過多なので価格破壊も起こっていない。だからこそ障がい者にもきちんとお給料を払えるし、これから農業を始めてみたい人にとってはとても可能性があると佐伯さんは主張します。

平均月収3,000円と言われる障がい者賃金、佐伯さんのところでは現在月6万円をお支払いできているそう......!

 

もちろん一朝一夕でうまくいくわけではありませんし、たいへんなご苦労をされている自然栽培農家さんもいらっしゃるでしょう。だからこそ横のつながりを大事にして知恵や人手を出し合う意味があるし、専業農家にならなくても、ベランダ菜園や共同農園など自分に合った形で農業に携わる人が少しでも増えればいい。

そうすることで日本中の耕作放棄地が減り、新たな雇用が生まれ、市場に安心安全な作物が増えるなら、そんな素晴らしいことはないんじゃないかなと、素直に思います^^

 

佐伯さんが今取り組まれていること

自然栽培パーティーに加入している団体は、今では100を超えています。全国各地にこの輪が広がることで、障がいの有無に関わらず就労が困難な人、市民や企業など誰もが自然栽培に気軽に参加できるようになりつつあります。

三つ子ちゃんが高校を卒業した今、佐伯さんが取り組まれているのは、

  • 子どもたちが自然栽培に携われる場を増やすこと
  • アフリカのマラウイ共和国に自然栽培を根づかせること
  • 農業や山の環境保全に欠かせないミツバチを育てること

だそう。私も娘たちと一緒に自然栽培を体験したいし、ニホンミツバチの養蜂をお義父さんに学びたいなと思っていたところ!

 

ミツバチが増えれば植物の受粉が促されます。それによって作物の実りはもちろん、山の実りもが増えれば、獣たちが山を降りてくることも減り、獣害対策にもなるんですよね。

お義父さんに教えてもらった、ニホンミツバチとそのはちみつのこと。

2018.05.07

発酵も養蜂も自然栽培も、やっぱりみーんな繋がってるな〜と実感しましたし、自分がやろうとしていることの意義も再確認できて嬉しかったです^^♡

矩子さんとの対談・質疑応答

当初、2時間のうち佐伯さんが20分話し、残りは矩子さんとの対談や質疑応答......の予定だったそうですが、気づけば佐伯さんパートのみで90分が経過(笑)。それくらい佐伯さんのお話が面白く、みなさんも引き込まれていた様子。そのことに矩子さんもとっても満足げ♪

そして始まった、事前質問に対する対談形式での回答をだーーっと箇条書きにしていきます!

  • 素人が畑仕事をするうえで大切にすべきことは?
    →野菜だけを見ないこと。土や他の生き物にも目を向けて楽しむこと。「野菜の気持ちになって考えてみること」も大事!
  • 肥料の入っていない土はどこで手に入れられる?
    →ホームセンターで赤玉土・腐葉土・川砂などを買って水はけがよくなるように混ぜましょう。自然栽培をしている人が近くにいれば土をわけてもらっても◎
  • 自宅の庭には砂利が多い。どうすればいい?
    →まずはトマトから始めてみてください
  • 園庭のない保育園で園児に農業体験させてあげるには?
    →室内で何かを育てるより、外に農園を借りることを検討してみてください
  • 障がい者と継続的に仕事をするコツは?
    →収穫など楽しいことから一緒に始めましょう!
  • プランターで葉野菜を育てるコツは?
    →サラダミックス(ベビーリーフ)なら一ヶ月くらいで収穫できるのでおすすめです
  • 自然栽培をやっている仲間を探す方法は?
    →自然栽培パーティーに入ってください!個人でも参加できます^^
  • 自然栽培を知らない市民農園の方とうまくやるには?
    →農業の話をしないこと(笑)。天気の話などする、聞こえないふりをするなど、不毛な議論をしないようにしましょう!
  • 週に1,2回の水やりでも育つ作物は?
    →自然栽培の場合、水やりそのものがそれほどいらないので大丈夫!自分が育てるより、勝手に育つイメージで!
  • 虫が苦手な子どもに農業体験を楽しんでもらうには?
    →無理やり触らせる必要はない。虫以外に面白いことがたくさんあるし、自然栽培の畑にそれほど虫は多くないです
  • 自然栽培の野菜の売り先はどこですか?
    →僕自身は流通業者に買い取ってもらっている。ホームページから個人に買ってもらうこともある。欲しい人はたくさんいるし、消費者側も求めていることをもっと声に出してください!
  • コンポストについてどう思われますか?
    →堆肥として使うなら、しっかり熟成させないと地下水の汚染にもなる。熟成度合いを見極める方法はハツカダイコンの種を撒いてみること。芽が出れば土に入れてOK!
  • 中性塩を使った農法についてどう思われますか?
    →ミネラル補給が目的なのだと思うけど、自然栽培の場合土壌にミネラルが豊富なのでそれほど必要性を感じていません
  • 最近増えている40〜50代の引きこもりについてどう思われますか?
    →引きこもりではなく「立てこもり」ではないか。何かと闘っている人を敵と見なすのではなく、味方になることが出来れば。

矩子さんの鋭いツッコミもとても面白くて、この対談ももう少し聞いていたかったな〜なんて思ったり^^

 

そしてその後、参加者としてお越しになっていた朝型美人塾の堀内瑠美さんから「自然栽培の作物は高価なイメージがある。手間が少なくて済むのなら、もうちょっと買いやすい価格にすることはできないか。食べ盛りのお子さんがいる家庭では取り入れにくいように思う」という質問が。これ、まさに私も気になっていたことで、懇親会で聞いてみようかな〜なんて思っていたのでビックリ(笑)。

その質問に対し佐伯さんから「では例えば5kgのお米がいくらならいいと思いますか?」と逆質問が。瑠美さんと私の心の答えは全く同じで「3,000円くらいなら......」。私も現状、5kg3,000円台の無農薬玄米を購入してます^^

 

佐伯さんは「うちのお米はそれくらいの価格です。5kg3,000円なら、お茶碗1杯39円です。でも慣行農法のお米は1杯9円。これでは農家さんが可哀そうだなと思うんです」「もっと高いお米もあって良いと思うけど、5kg3,000円くらいが、僕もベストだと思ってます」。

自然栽培のお米って、5kg5,000〜6,000円......1kg1,000円以上が殆どなんですよね。主食だからこだわりたい、でも主食だからこそ量が必要。我が家の三姉妹が食べる量も当分は増える一方ですし、これは《誰もが買い続けられる価格ではない》と感じます......。

 

なので佐伯さんがおっしゃるように、自然栽培に従事する人が増えて、今よりもう少し市場原理が働くようになって、5kg3,000円台の自然栽培米がもっとたくさん出回るようになれば、それは本当に嬉しい^^♡

ちなみに佐伯さんが運営されている《メイドイン青空》の自然栽培米は5kg3,780でした。これは良心的な価格! 現在は完売の様子、新米の季節が待ち遠しいですね。

おわりに

普段は農業従事者の前でお話することがほとんどだという佐伯さん。そうではない一般の方を前にするのは少し緊張されたそうですが、とてもいい雰囲気のなかで話せて良かった!とスタッフ懇親会でおっしゃっていました。

今慣行農法をされている農家さんが自然栽培に方向転換するのは、色々な意味でとてもハードルが高い。だからこそ私達のような農業経験のない人が、固定概念のないまっさらな状態で自然栽培を始めたり、そこに興味を持つことに意味があるし、この会に100名が集まったことは、本当に喜ばしい一歩だなと思うのです。

 

慣行農法や有機農法を批判したいわけではありません。私ももちろんたくさんお世話になっていますから^^ でもそこに顕在する問題から目を逸らし続けるのにも違和感があるし、色々な選択肢があるのだと知ることはとても大切なんじゃないかなぁ......。

 

佐伯さんの活動については、著書もありますのでこちらも是非! 私はお話会当日買おうかなと思ってましたが、購入希望者さんが多く完売してしまったので、Amazonでポチったところです(笑)。

このお話会を機に、佐伯さんや矩子さんが大阪でも自然栽培のコミュニティや農園を確保するべく動き始められるそう。私も何かそのお手伝いができればいいな〜♡

この日のスタッフさんがまた素敵な方ばかりで、一緒に場作りに関われてとても嬉しかったです。佐伯さん、矩子さん、本当ありがとうございました!みんなでよりよい未来に向かっていきましょう^^♡

 

この記事を書いた橘花(kikka)ってこんな人