全国のローカル発酵食を巡る旅に出よう。《発酵ツーリズム》堪能レポート!

4/26から7/8まで、渋谷ヒカリエの8階・d47ミュージアムで開催されている《発酵ツーリズム》。発酵DIYマニアとして、会期前から行きたくて行きたくてたまらなかったこの展覧会に、ようやく足を運ぶことができました!

せっかくなら、本展覧会のキュレーター・発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが在廊されている、トークショーがある日に行きたいな〜とカレンダーとにらめっこしていたのです^^

書きたいことがたくさんあるので、展覧会の概要から始め、当日の私の足取りを追いつつレポしてみたいと思います!

《発酵ツーリズム》とは、ローカル発酵食の博覧会である

《発酵ツーリズム》の会場となっているd47ミュージアムは、元々《全国47都道府県のアレコレを展示するために、47の展示台が常設されている展示スペース》だそう。そのd47ミュージアム(dは design のdです^^)の、今回のテーマが《47種類のローカル発酵食》。

全国各地から集めたというと、それぞれの醸造メーカーの担当者さんにアポをとって「ではいついつまでに○○と○○を納品していただいて......」なんてやり取りをしたんだろうと思うじゃないですか。でもそうじゃないのが、この《発酵ツーリズム》。キュレーターの小倉ヒラクさんは、47の発酵食をセレクトされる際に

1:種類が被らないこと
→日本酒・醤油などメジャーな発酵食がほとんど登場しない
2:ルーツに忠実なこと
→その土地の歴史に深く根付いたものを優先する
3:景色と人にフォーカスすること
→食品の背景にある文化をしっかり伝える

というルールを設けられたそう。日本酒は兵庫だけ、醤油は香川だけ、味噌は愛知だけ。じゃあ他の都道府県どーすんの??の結果ヒラクさんがたどり着いたのが、もう見たことも聞いたこともないような謎に満ちた土着の発酵食。名前を見ただけでは、原料も製法もいっさい想像がつかない珍品のオンパレード......。

歴史ある発酵食とはいえ、現在では個人がヒッソリ細々と作っているだけ......というモノも多く、ヒラクさんは自ら47都道府県をめぐり、発酵食探しから加工方法の確認・文化的背景の分析・失われた発酵食の再現まで、ほぼお一人でこなされたというから、脱帽です。

その相当にハードだったであろう旅の様子は、ヒラクさんの新刊《日本発酵紀行》にもまとまっているので、展覧会に行けそうでもそうでなくても、発酵や地域文化に興味がある人には猛烈におすすめします.....! この微生物の息遣いにも似た、ぽこぽこした表紙の紙質が個人的にツボ♡

ただしAmazonや楽天など大手ネットショップでの販売は9月以降に延期されたとのこと、早くお手に取りたい方はd47ミュージアムまたは全国の素敵な取扱書店さんにGOしてみてください。どうしても近くにお店がない!!という人はジュンク堂書店のネットショップが便利そう^^

私は展覧会に行く前に書店で《日本発酵紀行》をゲットして読んでいたので、期待値めちゃくちゃあがってましたけど、展覧会はそれを裏切らない面白さでしたよ......!

発酵スクール「とことん!醤油&木桶トーク」編に参加

毎週末のように、会場内で開催されている興味深いトークショーのなかから、私が参加したのは醤油と木桶をテーマにした回。小豆島からヤマロク醤油の当主・山本康夫さんと醤油ソムリエの黒島慶子さんをゲストに迎え、ヒラクさんを交えてのフリートーク。

余談ですが、11時からのこのトークショーに参加すべく、私は三人の娘たちを夫に託し朝7時台の新幹線に乗りましたですよ(笑)。

山本さんは、日本最後の巨大木桶メーカーさんの廃業決定に伴い、断絶の危機に瀕していた《巨大木桶作りの技術》を次世代に残そうと立ち上がられた方。年に一度ヤマロク醤油のある小豆島に、有志の醸造家や大工を全国から集め、その高い技術を伝える研修会を開催されています。

従来の、木桶メーカー頼みの中央集権的な状態から、醸造家自ら技術を磨き、必要に応じて各地で集まるという自律分散型の技術保全へ。まさに新時代、まさに令和っぽくて良いなぁと、胸が熱くなりました。

「なんで蔵元みずから木桶づくりをやろうと思ったんですか?」というヒラクさんの質問に「やったほうが、オモロイやん!って思ったから^^」と笑顔で答える山本さん。ああ心が動いちゃったら、やるしかないよねぇ......その想いに素直に従う山本さん、格好いいなぁ......。

なぜそこまでして木桶にこだわるのか? 金属やホーローでできたタンクよりも、多孔質な木で出来た桶の方がその蔵独自の微生物が殖えやすく、蔵の個性が出しやすいというのは私も聞いたことがありました。

でも更に興味深かったのは、

  1. 竹のタガを使って桶を作る技術が日本で独自に発達した
  2. その技術のお陰で高さ数メートルに及ぶ巨大木桶を作ることができた
  3. 巨大木桶があったから日本酒の大量生産が可能になった
  4. 大量生産が可能になったことで醸造技術が向上した
  5. 質のいい日本酒が作れたから、酒造業が地域の基幹産業となった
  6. 海運が発達した江戸時代以降、日本酒を他藩に輸出して外貨を稼ぐことができた

という裏話。木桶は単なる容器ではなく、醸造産業における縁の下の力持ちだったんだなぁ......。ちなみにヨーロッパのワインやウイスキーを入れる樽は、竹ではなく鉄を使うため、一定以上の大きさのものは作れないそう。

木桶の歴史をまとめる本があるとすれば、そこに確実に名を残すであろう山本さん。その山本さんから直接木桶の話を聞けたのは、貴重だったなぁ。ヤマロク醤油さんは、365日事前予約なしで蔵見学が可能とのこと。私も一度小豆島に伺おう!!と心に決めました^^

トークショーの後半は、醤油ソムリエ・黒島慶子さんによる「利き醤油」。3種類の濃口醤油と白たまり、再仕込み醤油の計5種類の醤油の香りや味を比べてみました。醤油は塩分濃度が高くて舌が麻痺してしまうため、主に色と香りだけで「利く」のだとか。

濃口3種はすべて国産大豆・木桶仕込みでしたが、どれも少しずつ味や香りが違う......! 私がいいなと思ったのは、足立醸造さんの《小さな国産有機醤油》。たまたまかもしれないけど、私の出身地である兵庫県の醤油蔵さん。自分と縁のある土地の味を美味しいと思えるのって、なんか嬉しい♡

ここで初めて味わった愛知・日東醸造さんの《白たまり》、私のファーストインプレッションは「いつも料理に使ってる《塩糀の上澄み液》に味わいが似てる......!」でした(笑)。この話はまた改めて書きますが、俄然興味がわいたのでお土産で買って帰りましたよー♪

黒島さんと、醤油のセレクトショップ・職人醤油の高橋万太郎さん (実は夫と旧知の仲・笑) 共著の《醤油本》はこちらです^^

小倉ヒラクさんによるミュージアムツアーに参加♪

12時半に醤油&木桶トークショーが終わり、その後13時からはヒラクさん解説のミュージアムツアー。ヒラクさんがマイク片手に語るローカル発酵食の探索秘話は、《日本発酵紀行》の内容とかぶったりかぶらなかったり、いや〜〜やっぱりその人の体験から出る言葉って面白い......!

特別ゲストとして、ヒラクさん絶賛の《いかの塩辛の黒作り》の製造元・有限会社京吉の社長さんも富山からお越しになっていて、なぜイカ墨ごと漬ける《黒作り》が生まれたのかという話も聞かせてもらいました。今は富山のローカルフードであるこの黒作り、これを機に全国区になってしまうかも?!

私もお土産で買いましたが、塩辛くなくまろやかでコクがあって美味しいんですよーー♡♡ あまりお酒が飲めない私でも、これはキリッとした辛口の日本酒に合いそう!なんて思ってしまうくらい。ああ、こういうときだけでもお酒強くなりたい......。

主催のd47公式ツイッターに写り込んでいた私......↓(笑)

その後もヒラクさんが展示ゾーンごとに1つか2つの発酵食をピックアップ。話を聞きながら、現物を見たり匂いを嗅いだりすると、やっぱり入ってくる情報の解像度が全然違う。

ヒラクさんが「風景と人にフォーカスする」ことをルールに課していただけあって、どの発酵食にも物語があるんだよね。壮大な歴史のロマンを感じさせるものもあれば、乏しい食料をいかに無駄にせず糧にするか......みたいな涙ぐましいものもあったりして。

この長崎・対馬の《せん団子》なんて、サツマイモのデンプンを取り出すために「千の手間」がかかるから、その名がついたそうです......!

福岡の《明太子》のような誰もが知っているものがある一方、もう現地の人も殆ど知らなくて、ヒラクさんが必死で情報収集して再現した大阪の《守口漬け》とか青森の《ごど》のようなものがあったり。この振り幅こそが、日本の発酵文化の懐深さなんだろう。

ヒラクさんの軽妙な語り口についつい楽しく旅行気分を味わえちゃうけど、いや〜〜実際にこれ全部一人で現地行ってアレコレ調べて......って、半端ないボリューム。虚弱体質を自称しているヒラクさん、この日もちょっとお疲れの色が見えた気が。展覧会が終わったらどうぞゆっくり休んでください......!

d47食堂で味わう《珍味づくし定食》と《甘酒3種 飲み比べ》!

ヒラクさんのミュージアムツアーが終わった時点で、もう14時前。さすがにお腹が空いていたので、ミュージアム併設のd47食堂へ。

会期の序盤・中盤・終盤で3種類の発酵定食が順に提供されているのですが、私がありつけたのは《珍味づくし定食》!! 《発酵ツーリズム》に展示されていた6種類の珍味が実際に味わえる、スペシャルな定食です。

滋賀の《鮒のなれずし(ふな寿司)》のお茶漬け、長野の塩を使わないお漬物《すんき》、佐賀の鯨の軟骨の粕漬《松浦漬け》、奈良の高級粕漬《奈良漬》、京都の《柴漬け》、熊本のずいきの漬物《あかど漬け》。これらが一堂に会した定食はきっと日本初......!

特に楽しみだったのが、【新説!所JAPAN】のヒラクさん出演回で、所ジョージさんが「キクラゲみたいで、美味い!」と絶賛されていた《松浦漬け》。あ〜これは確かにコリコリいい食感!!と、マイお土産リストにソッコーで加えました。他にも色んな漬物があったけど、シャキシャキだったりポリポリだったり、食感比べが楽しかったな〜♪

で、食後はデザート代わりに《甘酒3種 飲み比べ》を。五味醤油さんの黄麹を使ったもの、馬場商店さんの紅麹を使ったもの、みやもと糀店の黒麹を使ったものの、三種類。

紅麹甘酒は初めて、それほど強い独自の風味があるわけじゃないけど、色が可愛いからそれを活かした使い方を考えるのが楽しそう。黒麹甘酒は「グレープフルーツのような爽やかな酸味」って書いてあって、まさにそんな感じ! でもうちで作る黒麹甘酒はもっと「甘酸っぱい」けどな......?と考えてみたら、私はもち米で甘酒を作るから、強い甘みに慣れてしまっているのかもと気づいた。慣れってコワい......。

ちなみに《発酵ツーリズム》でセレクトされている山口の発酵食は《あまぎゃあ(甘粥)》。もち米で作った甘酒のことだそうで、私はいつも《あまぎゃあ》を作っていたのか!と気づきました(笑)。

再度《発酵ツーリズム》に戻って、展示をよーーく見た

お腹が満たされたところで、再度展覧会の会場へ。さっきはヒラクさんのミュージアムツアーを聞きながらだったけど、今回は自分のペースで、解説などもひとつひとつ丁寧に読みながら。

この《発酵ツーリズム》の展示、ポップなデザインにも目が惹かれますが、ゾーニングの仕方が実に面白いのですよ。北海道から順番に......なんて王道パターンではなく、《海・山・街・島》という4ゾーンに分けられているのがポイント。

本来は鮮度命!な海産物を、豊富な塩で漬け込むところから始まり、寿司や魚醤などの食文化が生まれた《海の発酵》。海とは逆に塩が貴重だったので、主に乳酸発酵や酒粕で、山の恵みや農作物の腐敗を防止した《山の発酵》。

巨大木桶で大量生産が可能になった醸造物を、他藩に輸出することで経済を支えた《街の発酵》。外界から隔絶され、限られた資源を使うべく、奇想天外な発想が動員された《島の発酵》。

こうカテゴライズされることで、急にひとつひとつの発酵食がハイコンテクストなものになり、なるほど......!とその全体像をとらえやすくなる。そしてヒラクさんが撮る写真、紡ぐ言葉がいちいち叙情的でセンスフルで、もうくーーーーーっ!!と悔しくなるくらい(笑)。いやほんと、何度か涙ぐみそうになりましたもん。

現物の展示以外に、時々《フタを開けて匂いを嗅いでみてください》なんて体験コーナーもあって。私はかの有名な《くさや》を初めて嗅ぎましたよ......これ食べてみようと思った人、相当なツワモノ.....! よく言われる喩えだけど、ん便所のカホリ......あ、これはくさやじゃなくて鯖のへしこだよ〜^^

あとね、個人的に好きだったのが、それぞれの発酵に関与している微生物の記載。「乳酸菌類」「麹菌」「酵母類」あたりが多いんだけど、ときどき「謎の細菌類」ってのがあって。くさやなんかもまさにそう。あ、コレ謎なんだ......って思わずほくそ笑んでしまう感じ。微生物の世界は、まだまだわからないことだらけだからこそ面白い♡

今ってどこに行っても全国チェーンのコンビニや飲食店が並んでいて、街の景色がかなり均質化されてしまった気がするけど、その裏でローカル発酵食は「その土地らしさ」を示すアイコンとして、ひっそりと存在しているのだ。

それはまさに、その土地の風土と、人々の知恵の結び目。今回《発酵ツーリズム》に登場したことで、生きながらえる発酵食があって欲しいし、取り上げられなかった発酵食にもスポットを当てる人が増えたらいいな。ヒラクさんが限られた期間内に調べただけでもこれだけ見つかったのだから、その土地の人たちが本気を出せば、きっともっとたくさん見つかるはず......!

発酵してるか否かに関わらず郷土食は魅力的なものだけど、旬のものをシンプルにサクッと食べる《ファーストフード》に比べて、発酵食って手間や時間を掛けて作られる《スローフード》だからこそ、そこに多くの工夫や面白さがある。

せっかく個性豊かな47もの都道府県があるのだから、そこにしかない《スローフード》は食べ継がれて欲しいし、保存性の良さを生かし物産品として時には外貨を稼げる存在にもなって欲しい。折しも発酵は、ムーブメントからカルチャーになりつつあるのだから。

私はまず、材料が手に入りかつ自作できそうなものをいくつか、この手で再現してみたいなと思ってます♡

そして最後は《発酵デパートメント》で〆!

コレでもかー!というくらいじっくり展示を見終わったあとは、楽しみにしていた《発酵デパートメント》でお土産を物色。最初から爆買いする前提だったので値札は気にしなかったけど、新幹線で帰らないといけないので重量の方がキニナル......! キャリーケース持っていけばよかった(涙)

自然食品店なんかで見たことがあるものはひとまず候補から外し、ここで買っておかないともうお目にかかれなさそう、というレアアイテムを中心にセレクト。残念だったのは、欲しかったものがいくつか売り切れてしまっていたこと。ミュージアムツアーの後に売れてしまったっぽい......。

とはいえこれだけ買えたのだから、ヨシとしますかね^^

一応紹介しておくと......

  1. 愛知:大豆を使わない白醤油《しろたまり》/日東醸造㈱
  2. 秋田:ハタハタを使った魚醤《しょっつる》/㈱諸井醸造
  3. 新潟:唐辛子・麹・塩・柚子で作る発酵調味料《かんずり》/㈲かんずり
  4. 高知:乳酸由来の酸味のあるお茶《碁石茶》/大豊町碁石茶協同組合
  5. 富山:イカ墨ごと漬け込んだ塩辛《黒作り》/㈲京吉
  6. 沖縄:豆腐を塩糀と泡盛に漬け込んだ《豆腐よう》/㈱琉球うりずん物産
  7. 佐賀:鯨の上顎の軟骨の粕漬け《松浦漬け》/㈲松浦漬本舗
  8. 静岡:カツオ出汁の原型《潮かつお》/カネサ鰹節商店
  9. 長野:塩を使わない乳酸発酵の漬物《すんき漬け》/㈱日義特産

です。うむ、余は満足じゃ〜〜^^

ただ味わうにとどまらず、《すんき》をスターターにして大根葉の漬物作ってみよう♪とか、試食した《豆腐よう》の燻製が美味しかったから、家でスモークしよう♪とか、+αもちょっと考えてます(笑)。

おわりに

こうして日帰りで大阪から展覧会に参加したわけですが、帰ってきてからもお土産の珍品を味わったり、《日本発酵紀行》を読み直したりとまだまだ余韻に浸っています。本には展覧会に展示しきれないヒラクさんの旅物語が詰まってるので、二度美味しい感じですかね^^

取扱書店さんで購入すれば《発酵ツーリズム 瓦版》として、本に未収録の沖縄の《豆腐よう》と青森の《ごど》の物語が載った非売品のフリーペーパーがもらえますよ〜。Amazonなどでは手に入らないものなので、今のうちにゲットしてみてください。

《くさや・甲州ワイン・すんき漬け・碁石茶》はヒラクさんの前著《発酵文化人類学》に詳しく載ってますので、こちらも是非ご一緒に^^

《発酵ツーリズム》は7月8日まで。まだまだ興味深いイベントがたくさん残っているので、チェックしてみてくださいね!

 

▼ジモコロ掲載の《発酵ツーリズムレポ》も超面白い。さすが......!

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この記事を書いた橘花(kikka)ってこんな人