足元にある宝物《和ハーブ》が教えてくれたこと

一般社団法人和ハーブ協会認定の和ハーブインストラクターという資格を保有している私。この記事ではまだまだ知る人が少ない《和ハーブ®》という言葉の意味と、私がなぜ《和ハーブ推し》なのかについてまとめてみます。

そもそも《和ハーブ®》って、なんだ?

和ハーブ協会が定義する《和ハーブ®》とは、江戸時代以前より、日本で有用されてきた植物の総称です。野生種もあれば栽培種もあり、日本原産種だけでなく江戸時代以前に日本に入ってきたものであれば外来種も含むので、和ハーブと呼べる植物は実はとても多いのです。

例を挙げると、日本のハーブと聞いて真っ先に思い浮かぶ、ショウガ・ユズ・シソ・ミョウガといった薬味系はもちろん、野草や薬草に分類されがちなヨモギ・ドクダミ・スギナ・オオバコなどもそう。また用途も医食に留まらず、染料に使われるタデアイやアカネ、繊維が用いられるコウゾ・クズ・アサ、建材に使われるスギ・ヒノキなども含みます。

ミョウガの群生

温暖湿潤な気候と南北に長い国土を持つ日本は、世界でも屈指の《植物大国・森林大国》。衣食住のほとんど全てを植物素材でまかなってきた文化があるにも関わらず、今や海外由来の素材や石油化学製品に押され気味。更には生産者や加工者の高齢化など、あちこちで文化の存続が危ぶまれています。

和ハーブ協会のミッションは、そんな日本の豊かな植物文化を未来に継承していくこと。各地の特色が反映された和ハーブ文化は、地域振興の火付け役にもなり得ます。そういった社会事業的側面に共感したことも、和ハーブを学ぶきっかけになりました。

和ハーブに興味を持ったイキサツ

私自身を振り返ってみると、なぜか幼少期から野草にものすごく心惹かれる子どもでした。家族旅行で毎年訪れていた八ヶ岳では高山植物に夢中になり、「花壇に咲く花には興味がない」と豪語し(笑)、誕生日プレゼントには2万円の野草図鑑を買ってもらったことも(ある時期に手放したのが悔やまれる......!)。

とはいえ緑豊かとは言いづらい市街地に生まれ育ったので、野草に対する好奇心は不完全燃焼なまま大人になりました。植物や空の写真を撮りたいからという理由でカメラを持ち始めてからは、写真を撮るために遠出をしては野草にばかりレンズを向けていた時期もあったなぁ......。

社会人になってからアロマテラピーやハーブにも興味がわき、本や精油を買い求めたりもしたものの、いまいちハマりきれなかったのは、そこに登場する植物のほとんどが海外原産であまり馴染みがなかったから。「日本に生まれ育った私たちの心身を整えるのに、本当に海外の植物が必要なんだろうか」「似たような役割を持つ植物が、日本にだってありそうなのにな」「世界中の人がその植物を求めたら絶滅したりしないのかな......」なんてことが頭によぎったりもして。

清涼感ある香りを持つニホンハッカ

そこから状況が変わったのは、結婚して飛騨高山という土地にご縁ができてから。義実家の周りには、ごく普通に山菜や薬草が自生しており、その豊かさにクラクラしつつ野草への興味が再燃。本気で田舎暮らしを考えるようになった、キッカケのひとつでもあります。

▼2018年に書いた野草萌え記事(笑)

野草の魅力にどっぷりハマった、飛騨高山に帰省中の日々徒然。

2018.05.03

そして2019年の年末に、念願叶って高山に家族で移住。築40年の、広い庭のある中古日本家屋に住み始めて数ヶ月、雪国の長い冬が終わるとみるみるうちに庭の風景が変化。樹々には花が咲き、いたるところで名前のわからない草たちが芽吹き始め......!

毎日のように庭に出て地面に目を凝らし、スマホや図鑑で草の名前を調べるうちに、やっぱりちゃんと植物について学びたいなという気持ちが湧いてきて。その時脳裏に蘇ったのが、何年も前に書店で見かけた《和ハーブ》という言葉でした。

 

「うちの庭に生えている植物の名前や使い方が知りたい」というシンプルな欲求からスタートしたものの、和ハーブ協会のテキストや図鑑を読み進めていくなかで、日本の植物文化の奥深さやそれを取り巻く状況を知ると「微力であっても、私にできることを模索したい」と思わずにはいられませんでした。

勉強を進めながらも、気になった和ハーブの種や苗を片っ端から購入(笑)。その後和ハーブ検定、インストラクター講座と進み今に至ります^^

私が思う、和ハーブの可能性

私の好きな言葉に《あなたに必要なものは、あなたの庭に生える》というものがあります。誰が最初に言ったのかは不明だそうですが、野草好きの友人から教えてもらいました。

また和ハーブを学んでいると《三里四方に医者いらず》という言葉がキーワードとして何度も出てきます。三里四方とは片道約12km......昔の人が徒歩で日帰りできる行動範囲、のこと。この範囲内に生えているものを食べていれば健康でいられる、という意味です。マクロビオティックで出てくる《身土不二》とも近い考え方ですね。

庭にあるサンショウの樹

つまり身近にあるものこそが、今の自分にとって必要なものであり、それらの価値に気づくことが心身ともに健やかでいるためのヒントになるんじゃないかな、と。

植物は自分では動けません。そのため、我が身を紫外線や外敵から守るべく、体内に様々な化学物質(フィトケミカル)を一生懸命作り出します。そしてそのフィトケミカルや土から吸い上げたミネラル類は、同じ気候風土の元で生きるヒトにとっても有益......だったりするのです。

農薬も肥料も使わない自然栽培では、作物が土の中の少ない養分を求めて力強く根を張ります。以前佐伯康人さんの自然栽培のお話会で写真を見せていただきましたが、慣行農法と比べて根の量が数倍になることもあるのだとか。根の量が多いぶんだけ、作物内の栄養分が多かったり、風雨に耐えうる強さがあったり。そう考えると、種撒きも水やりもいらない野草や和ハーブって《究極の自然栽培》とも言えそうだなって。

左が慣行農法の稲、右が自然栽培の稲

高価なサプリや海外由来のスーパーフードを頼る手もあるけど、もしかすると目の前の庭に勝手に生えてるドクダミやヨモギにも似たようなパワーがあるのかもしれない......そんなことに気づいたら、世界の見え方はゴロッと変わります。

私は菌草生活研究家として、和ハーブインストラクターとして、そういった植物達の存在や暮らしへの取り入れ方を広く伝えていきたいな、と。お茶として飲んだり料理に使ったり、蒸留して化粧水を作ったり入浴剤にしたり、毎日何かしら和ハーブの恩恵を受けていますから^^

植物を育てるのはあまり得意ではなかったのですが、庭にもコツコツ和ハーブを殖やし今では100種類以上が自生しています。

おわりに

これを書いている2022年7月、まだまだ世間はコロナ禍の中にあります。長引くコロナ対策に疲弊している人も少なくないと思いますが、一旦視線を外にやってみると、今年も昨年もずっとずっと前も、自然は変わらずそこにあるんだなぁと言うことに気づきます。

目に見えないものや情報に過度に振り回されることなく、目の前に咲いた一輪の花やひと組の若葉を愛でることができれば、肩の力はスーーッと抜けていきます。そうして目が合った植物が、実は美味しく食べられたり、すごい薬効を持っている......なんてことを知っていれば、ものすごーく心が豊かになりますよ^^

三大和薬のひとつ、ゲンノショウコ

都会であっても意識を向ければあちこちに植物が見つかりますので、是非探索に出てみてください。それでも物足りないな〜という方には、田舎暮らしという選択肢もありますよ(笑)。

日本が世界に誇る和ハーブ文化を、共に楽しみ伝えられる人が増えるよう、私ももっと学びを深めたいと思います。

この記事を書いた橘花(kikka)ってこんな人