菌草生活研究家が語る《発酵と和ハーブ》のある暮らし、とは

私が肩書きとして使用している《菌草生活(きんそうせいかつ)研究家》。この記事では、自己紹介をすると必ず「何ですか?それ」と訊かれるこの肩書きに込めた想いを綴ってみます。ちなみに菌草の菌は発酵を、草は和ハーブ・薬草を表しています。

発酵と和ハーブの共通点は、どちらも《日本で昔から有用されてきた存在》であること。私は先人の膨大な智慧が詰まっているこの発酵と和ハーブを、現代の暮らしにいかに取り入れるかを考え、提案しています。

発酵との出会い

手を動かして何かを創ることと、食べることが昔から好きだった私は、独身時代から果実酒を漬けたりヨーグルトを自家製したりと手仕事を楽しんでいました。母の影響で、自然派寄りの嗜好もありましたしね。

そこから発酵にグッとフォーカスするようになったのは、結婚を控え「家族の健康を守れる自分でありたい」と思い、身体や食について改めて学んでから。マクロビオティック、アロマテラピー、ホメオパシー、予防接種、添加物......様々なことを知っていくなかで、特に大事なのは腸内環境や免疫力であり、その底上げに発酵食がいいらしい、と気づいたのが2010年のことでした。

年に一度の手前味噌づくりに加え、塩麹ブームの後押しなどもあり、様々な発酵食を作るように(もちろん失敗もたくさん経験・苦笑)。発酵食の素晴らしい点は、「○○は身体に良くない」「△△の入ってる食品は買っちゃダメ」といった減点方式になりがちな自然派志向のなかで、「作るのが楽しい!」「しかも美味しい!時短!」「気づいたら体調もいいかも♡」というポジティブな循環が生まれやすいこと。

目に見えない微生物の存在を感じ、それに自然と感謝の念が湧いてきたりするところもお気に入り^^ 八百万の神様の正体は微生物なんじゃないかと、わりと本気で思ってマス。

▼そんなことを語ったstand.fmの収録(笑)

その後「独学だけでなく、ちゃんと体系的に学ぼう」と思い発酵食大学認定の発酵食エキスパート1級を取得。最近は麹やキムチなども自家製し、ますます発酵の面白さにハマっています。

▼ヨーグルトメーカーを使った手軽な麹づくりがお気に入りです^^

ヨーグルトメーカーで手軽に始める《自家製 米麹づくり》

2019.06.03

和ハーブとの出会い

和ハーブについてはこちらの記事にも詳しく書きましたのでご一読ください。

▼和ハーブってどんな植物のこと?も解説しています^^

足元にある宝物《和ハーブ》が教えてくれたこと

2021.02.23

和ハーブという単語はとてもキャッチーだし、インストラクターでもあるためよく使っていますが、山菜・薬草・野草、何でもウェルカム!(節操なし・笑)

ちなみに私が住む高山市のお隣・飛騨市には官民一体で《薬草での町おこし》を目指すという取り組みがあります。私も薬草コンシェルジュの一人として薬草講座を開催したり、薬草体験施設《ひだ森のめぐみ》にスタッフとして入ったりもしますが、こちらで活動するときは「薬草」を使っています^^

自生する和ハーブ・薬草には、そのままでは食べにくい苦味やエグミを持つものもありますが、それを無くそうとアク抜きしすぎると、豊富なミネラルや薬効成分が失われることも多くて。なのでそこにうまく発酵技術や発酵調味料を組み合わせることで、自然の恵みをできるだけそのままに美味しく食べられる方法を模索しています^^

ミツバは生でも食べられるありがたい和ハーブ^^♡

食べられる山菜・山野草はもちろん、自然療法やお手当に役立つ薬草だって日本のあちこちに自生しているのに、その価値に気づくことなく海外由来の精油やハーブだけをもてはやしてるのって、なんだかすごくもったいないなぁ、と思うのです。

なので和ハーブでも薬草・野草でも、とにかく身近に生えている植物を活かす楽しさ・豊かさをもっと多くの人に知ってもらえたら嬉しいし、それを通じて自然豊かな場所で暮らすってやっぱりいいな〜!と田舎暮らし・地方移住を検討する人が増えたらそれも嬉しい(笑)。

近年の山野草ブームでマナーを守らず乱獲する人が増え、貴重な和ハーブが絶えかけている......なんて話もよく耳にします。自己中心的にならず、誰もが共存共栄の意識を持つ必要性も発信していきたいです。

発酵と和ハーブ、その先にあるもの

そんな風に発酵と和ハーブに出会い、学び、暮らしに取り入れていくなかで、実感していることがあります。

日本はニホンコウジカビを始めとする《カビによる発酵大国》です。対してヨーロッパなどはパンやワインなど《酵母による発酵》が主流。カビ類は微生物のなかでもっともサイズが大きく、そのぶん細菌類より高い分解能力を持ち、複雑な風味を生み出します。カビが好む温暖湿潤な気候条件と稲作文化が出会ったことで、日本では酒・醤油・味噌・味醂などバラエティに富んだ発酵食が発達しました。

一方で日本の気候や地理的条件は、多様な植生ももたらしました。シダ植物と種子植物を含む高等植物は、ヨーロッパ全土で約2,000種なのに対して、日本には約5,600種(うち1,650種が日本固有種!)が自生しています。更に言うと国土の約70%が森林に覆われており、まさに《植物大国・森林大国》なのです。

石油エネルギーを使い始めるまでは、日本人は衣食住のほとんど全てを植物素材でまかなうという、植物使いの達人集団だったんです......!!

つまり《発酵と和ハーブに培われた生活文化》は世界に誇れる日本のお家芸! 私はその2つを暮らしに取り入れQOLが向上することや、日本が脈々と育んできた文化を誇りに思う人を増やすこと、を最初の目的としています。

おわりに:菌草生活研究家の、今後の展望

《菌草生活研究家》という肩書きを使い始め、それらを通して自分が実現したいこととは??を日々突き詰めているうちに、「持続可能性や生物多様性が尊重される社会」を作りたいな......ということがその次の目的としてハッキリとしてきました。

私には四人の子どもたちがいますが、田舎暮らしを始めて「この子たちが大きくなった時に生きる世界が、今より生命豊かで美しいものであって欲しい」と今まで以上に思い始めました。むしろ、発酵と和ハーブは《手段・Do》であり、こちらが《目的・Be》なのかもしれないな、とさえ感じるくらい。

そしてその、持続可能性や生物多様性を暮らしにどう落とし込むか??を模索した末にたどり着いたのがパーマカルチャー(Permaculture)でした。パーマカルチャーとは《永続性のある(Permanent)+農業(Agriculture)+文化(Culture)》を組み合わせた造語です。


パーマカルチャーについても、また改めて記事を書く必要があるのですが(笑)端的に言うと「永続的な暮らしや文化のための思想&技術体系」で、まさに私が知りたかったこと、でした。

そこで2021年からパーマカルチャーセンタージャパン主催のパーマカルチャーデザイナーコースをオンラインで受講し、資格も無事に取得しました。まだデザイナーとして何ができるわけでもありませんが、パーマカルチャーを学んだことで自分の中に揺るがない軸が持てました。

パーマカルチャーの考え方をベースに《発酵と和ハーブのある暮らし》を提案し、自国の文化の素晴らしさを伝えていく......。そのためにはまず私自身がパーマカルチャーを実践せねばなりません。今はまだその入り口に立ったに過ぎませんが、寿命が80年だとすれば40歳の今はちょうどその半分! 人生後半戦に取り組みたいことが明確になり、今とてもクリアで前向きな気持ちです^^

発酵と和ハーブとパーマカルチャー、この三つを柱として《持続可能な暮らしと在り方》を探究、提案していきますので今後ともよろしくお願いいたします。

この記事を書いた橘花(kikka)ってこんな人